【ブランディングとは何か?わかりやすく簡単に】講義の一部を記事化!
わかりやすいブランディング解説
ブランディングとは?Part-2...「もっと簡単に!わかりやすく!」という要望により、講義資料の一部を記事化。
ブランディングとはブランドづくり。ブランドとは心の中に育っているもの。
よく「ブランディングについて、もっと簡単にわかりやすく言ってくれ」と言われます。ブランディングはそもそも事業者様が昔から取り組んできた様々な事を総合したものといえます。決して特別な事ではありません。
当方は社会人向けデザイン系学校のブランディング・デザインや、企業研修でのブランディングやCI /VIに関する講義で講師を担当。ブランディングについて私自身も学びながら、皆さまがわかりやすいよう20年近く取り組んできました。
その時に使う資料の一部をベースにし、できるだけ簡略に解説します。
ベースにした資料は、ページ作成時点で15年を超えた相当前のものも含んでいます。何卒ご容赦ください。
金額的価値を大まかに捉えると
ブランドの金額的な価値
最初に問いかけです。
お店にスニーカーがあります。
値段はいくら位と思いますか?または、おいくらなら買うでしょうか?
スニーカー - A
では、これではいかがでしょう?いくら位でしょうか?
スニーカー - B
この問いかけは15年以上、主に20~30歳代の若者世代に聞いてきました。累積で300人程度でしょう。
レクリエーションの一環でしたので統計をとっていたわけではありませんが、
- スニーカー - Aは、3,000~3,500円
- スニーカー - Bは、6,000~9,000円
以上が最も多かった金額感です。この差額、
2,500~6,000円
つまり大ざっぱに言うと2,500~6,000円、これがこのスニーカーにおけるナイキブランドの金額的価値といえます。
ナイキロゴが表示された商品は、ロゴが無い商品の2~3倍の金額になるわけです。
当然、この金額感は各々で異なります。
ところで日本の現状を表していると感じたことですが、オーストラリアから一時帰国された友人はスニーカー-Aを14,000円くらい、スニーカー-Bを26,000円と答えました(2024年)。日本の感覚の数倍になっていますね。
ナイキロゴの背景にあるもの
ナイキロゴの背景にあるものブランドの金額的価値の中身
ではそのナイキのロゴの背景には何があるのか?私なりに考えてみました。私の頭の中にあるナイキイメージです。いわば連想ゲームです。
これも15年以上前の資料をベースにしているので、素材や内容はけっこう古いものが混在していますがご容赦を。とはいえ印象の本質は現在もあまり変わっていないように思います。
※画像作成にあたっては、ナイキ様WEBサイトより引用、またフリー素材を利用しています。
「ナイキ」について一番最初に連想するもの。スニーカー。
ナイキといえばスニーカー、シューズ。ナイキのルーツ。
私にとってはナイキというと、まずはスニーカー・シューズを連想します。
● ナイキのルーツ、シューズ製品:ところでナイキはその原点において日本の会社、とりわけアシックス社と関係が深い事をご存じでしょうか。アシックス社はかつて鬼塚氏が創業しオニツカタイガーのブランド名でシューズを製造していました。そのアメリカ西部での販売代理権をナイキ社の創立者と契約したことに端を発しています。ぜひ検索してみてください。
クールなビジュアルとメッセージ
90年代半ばから革新的に変貌し、クールな表現を追求し続けるコミュニケーションビジュアル、コピーライティング
● スウッシュマークと、クールなビジュアル表現:90年代の半ば、ナイキは著名なアートディレクターの下、VIと広告・販促・PR活動において非常に斬新なビジュアルを展開しました。インパクトの強いビジュアルデザイン、コピーライティングのメッセージ力と物語性。それら強いコンセプトとクールなデザイン表現が目を引きました。
またナイキのシンボルマーク、いわゆる“スウッシュマーク”をNIKEのロゴタイプ(文字組み)との組み合わせシステムから独立させ、広告はじめ販促や店舗、それらへの媒体にスウッシュマーク単独で展開したデザイン表現は非常にクールでした。他のスポーツメーカーもナイキのクールな表現に追随せざるを得ず、スポーツビジネス業界全体のビジュアル表現を今も牽引し続けています。
とりわけ当時よりCI(いわば企業ブランディング)におけるデザイン開発に携わっていた私にとっては、スウッシュマークを単独展開した時は大変なインパクトを受けました。それまではナイキのロゴについてスウッシュマークとロゴタイプ(文字組み)の組み合わせシステムをあまりカッコイイと感じていませんでした。しかしそれが完全に覆った瞬間でした。
世界中の象徴的なアスリートが使用し、製品の信頼性を証明する
大衆の感情を沸かせるアスリート達がブランドを裏付ける
ナイキといえばプレミアムブランド、「エア・ジョーダン」を想起します。そのバスケットボールのマイケル・ジョーダンをはじめ、ゴルフではタイガー・ウッズ、テニスのナダルやフェデラー、女子テニスではシャラポワ、MLBのデレク・ジーター、サッカーではクリスティアーノ・ロナウド他、歴代のシンボリックなスーパーアスリート達が「アスリート契約」の下でナイキ製品を使用し、その信頼性や卓越した性能を証明してきました。
世界の大衆の感情を沸き出させる彼らのプレイ、そしてその特別な存在感がナイキのブランドイメージをさらに肉づけします。
「Just Do It」そして他には…
ナイキのブランドイメージ、諸々
● 「Just Do It」をメッセージに人々の前向きな生き方を応援、ファッションや文化と強く結びつく:ナイキはスポーツのみならず、ストリートファッションやストリートカルチャーへと幅広く受け入れられました。とりわけ製品ブランドの「ジョーダンブランド」と「Nike AIR」のブランドラインはマニアにとってプレミアがつくまでに至っています。展開当初、社会に非常に強いインパクトを与えたそのJust Do It、かれこれ30年ほど展開しています。世界に完全に定着したメッセージ、Just Do Itの文言はナイキ社の財産になりました。
また日本においては原宿の旗艦店、ナイキ原宿を想起します。その店舗デザインには著名デザイナーを起用。シンボリックな店舗としてトレンドを牽引しています。
ナイキのブランドイメージ、その本質をひも解いてみると…
私の中にあるナイキのブランドイメージ、その本質についてフタを開け、ひも解いてみます。
もちろん言わずとも知れたスポーツ製品の総合メーカーであり、スポーツ製品分野のトップブランドです。その製品は高い信頼性と性能を備え、常に新しい素材と製造技術を追求し、革新的な製品づくりに挑戦し続けています。それもそのはず、ナイキ社内をよく知る知人に聞いたところでは、企業文化は非常に自由であり、皆さまフロンティア精神に溢れているとのことです。
世界中で有名なグローバルブランドである一方、ユーザーはナイキの価値観に共感し生活文化としっかり結びついています。ユーザーの日常を前向きにするファッションであり、自身の価値観を地域のコミュニティに向けて表現するアイテムやアイコンになっています。
ところで広告活動では、昔よくTVCMを目にしましたが、2010年頃から見なくなりました。ちょうど巷で「広告が効かなくなった」と言われ始め、数年経った頃です。
その一方、Youtube動画を非常に多く目にするようになりました。理由は多々あるでしょうが、ターゲット分析からもTVCMよりYoutubeはじめ、各SNSでのPR・コミュニケーションや広告効果の方が、ブランディングとして得られるものが大きいと判断したのでしょう。Youtube動画では数分間の長いショートムービーも発信できます。またそれらの動画は財産としてストックされます。とにかく大量の動画が発信され続けています。
そのビジュアルやコピーは感情を動かすビジュアルイメージとコピーが展開され、記憶に残るクールで革新的な表現を一貫して続けています。時流を掴んだ表現と、その時代に最適なコミュニケーション手段・媒体を最大限活用しています。
繰り返しますが、以上の資料を作成したのがかれこれ15年ほど昔になります。しかし取り組み方針は今もあまり変わらず、むしろ強化されていると感じます。
その全くブレない“一貫性”とブランド管理は本当に素晴らしいと思います。
全ての企業活動がしっかり結びつく「スウッシュマーク」
ここでもう一度、ナイキのスニーカー
ナイキのシンボルロゴ「スウッシュマーク」。
このスウッシュマークが製品に表示されると、その製品の金額的価値が2~3倍になる事、大まかにでもご理解いただけたでしょうか。
製品そのものは元より、ナイキが長年培ってきた製品づくりに関するアレコレ、広告活動やPR・コミュニケーション活動、ブランドからのメッセージ。他にもナイキの歴史やルーツ、ナイキを創っている従業員や店舗スタッフ皆さまの印象、そして企業文化。ナイキと強く結びついた社会の文化、その文化の中にいるユーザーの印象。またナイキが密接に支援、関与するスーパーアスリート達が保証する製品の信頼性。
それら全ての事業活動で生み出された連想・イメージ、そして様々な物語がスウッシュマークにしっかり結びついています。
私たちはナイキのロゴ「スウッシュマーク」を目にした瞬間、そのナイキに関する数々の連想、知識や体験を一気に思い起こすわけです。
ブランディングとは、社会の中により良いイメージを創り続けていく、総合的な取り組み。
ブランディングとは知識・体験を通し、より良いイメージ連想を創り続けていく活動
ブランディングは特にナイキほどの大規模なものになると、広い視野と長い視点で実施計画を立て、統合されたコンセプトの下、一気に総合して各施策を展開します。
ブランディングはそれらの取り組みについて修正や改善を重ねつつ、ブランドを取り巻く環境を作りながら、ブランドそのものを育てていく事だとわかると思います。
つまりブランディングとは短期的にすぐ目に見える結果を求める事でもありません。製品などブランドそのもの以外にもブランドに関連する様々な活動、ユーザー、会社組織や社員に関連すること、その他ブランドにまつわる全ての事を総合したものです。ゆえにブランディングは経営戦略と両輪とされ、その取り組みは非常に広範囲に及びます。
- ロゴや名称を作るだけではありません
→ 背景に結びつくものが何もなければ、それはカッコいい記号や商標までです。 - 広告だけではありません
→ 相応のコストをかけ、インパクトが強く露出規模が大きいと認知度を高めることができます。分かりやすい例では「日清紡、名前は知ってるけど…何をしてるのかわからない♪」のCMです。ただし詳細な理解や共感はPRに繋げないと得られません。 - 宣伝だけではありません
→ 効果があっても一時の短い間までで、ブランドづくりに至らず他の取り組みが必要です。 - 良い商品を生むことだけではありません
→ そもそも真価を理解されないと売れません。理解されていても総合的なブランド力がないと、今は割と早い段階で価格競争になります。 - デザインだけではありません
→ デザインが素敵でも…真価が伝わらない、そもそもブランドの認知が向上するわけではない、デザイン面を高めるのはまだ優先事じゃなかった…という事も起き得ます。
以上を一つひとつ丁寧に行い、それぞれの目的を生かし、特長を補完し合い掛け合わせながら総合的・戦略的に取り組んでいきます。
ブランディングとは“ブランド”を創ることに他ならず、昔から取り組まれてきた事といえます。先述のように特別な事ではありません。
違いは以上を体系的に理解することで内在する課題を把握し方針を明確化でき、適切に改善を重ねているかどうか、によると思います。
常に環境の変容に合致した新しい媒体と手法を試しがら、また新規性の高い概念論が打ち立てられては一般化されながら現代に至っています。
ブランディングとはブランドの真価を伝え、
心に残るより良い体験を顧客に提供し、
ブランドの価値を高め育て上げていく地道な活動。
高級・高価格商品、ファッションだけではない。色々なものがブランドになりうる。
ところでブランドとは、高級・高価格商品などハイブランドや、ラグジュアリーファッションだけではない
国家、地方・自治体、大企業・中小企業問わずあらゆる会社組織、人物、商品・製品・サービス・素材、コンテンツ、活動や運動、技術、知見…様々なものはブランドになりうる
今さらと思いますが、ブランドとは何も高級・高価格商品やラグジュアリーファッションだけではありません。ダイソーは百円商品をメインに扱うショップブランドです。
ちなみに無印良品は開店当初、ブランド名称を無印とする一方、当初から明確な方針・方向性・ブランドコンセプトとビジュアルアイデンティティによるしっかりとしたデザイン管理があり、今は世界的ブランドに成長しています。「ナチュラル、自然派」の雰囲気づくり、商品そのものはノンラベル、という事は一貫しています。
国家レベルにおいては、今や世界中の国々が国家ブランディングに戦略的に取り組んでいます。地方自治体や地域コミュニティはこれまでも町おこしに取り組んできました。今は「地域ブランディング」として各自治体は取り組んでいます。『ふるさと納税』による後押しもその一環になります。地域についてWEBサイトで比較検討のため調べてもらうだけでも知名度は向上するでしょう。
旧来的な『町おこし』との違いは、“各々の施策を戦略的な全体計画の下、統合したコンセプト(方針・方向性・アイデンティティ~その地域はひと言で言うとどのような地域なのか...等)があり、各々それを表現している”などの違いかもしれません。各施策をそれぞれ単独で行うと、その事だけ、一時だけ、で終わります。地域ブランドを育てることになりません。
ともあれ地方自治体や地域のコミュニティ活動もブランドになりえます。
国家、地方・自治体、国家、地方・自治体、企業グループ、大企業から中小企業や個人事業のあらゆる会社組織、各種施設、製品・商品・サービス、コンテンツ、人物やタレント、部品や素材、活動や運動、技術、知識・知見、様々なものはブランドになりえます。
いっぺんに全部やるのは現実的ではない。ではどうするか?
いっぺんに全部やるのは現実的ではない。ではどうするか?
目標とロードマップ、その過程の流れ・ストーリーを想定、計画する。計画全体において現状はどの段階にいるかを把握した上で、必要性が高く効果を見込める優先事に注力する。
目標と、それに至る過程、流れ、発展のストーリーを想定し長期的なロードマップを作ります。客観的にどの段階にいるのか把握し、その段階毎にポイントを見極めます。その時に最も効果を見込める、または必要性が高いアイテム制作や施策をリストアップし、予算を参照しながら優先事に注力します。あわせて土台作り(一貫してブレないブランドアイデンティティやCI、デザインを統合するVIシステム)は常に意識して進めます。
CIやVIの開発にしても、今の時点で手をつけた方がいいのか、それとも会社規模の成長における次のステップアップでリブランディングなどを実施するのか。次のステップでリブランディングする想定の場合、作業規模はどの範囲まで及ぶだろうか。この想定には他ブランドの成長パターンを参考にしながら、将来必要になる作業内容や規模を想定できる知見や経験を要します。
規模による派手さはないため大きな反響など過度な期待はできませんが、小さい結果を積み重ねながら着実にブランドを育てていくわけです。
一つひとつ手をかけ、「ステップ by ステップ」式でブランドを創り上げていく
何からやればいいかわからない…ポイントや優先事はそれぞれブランドごとに全く異なります。
熟練したメンバー達による「ACDC ブランディングチーム」でもご相談を承ります。柔軟で現実的なご提案をし、丁寧に伴走いたします。
【CI計画の流れ】コーポレートアイデンティティにおける企画立案、アイデンティティの創造からCIデザイン・VI開発、浸透施策と運用管理まで
コーポレートアイデンティティ及びCIデザイン・VI開発は企業の将来像の実現に向けて、浸透施策から中長期的な運用管理まで視野に入れた、高い視座をもっての取り組みです。リニューアルでは企業理念など築いてきた資産をベースにアイデンティティを積み上げます。そのCIのリニューアルや新規開発についてワークフロー概要を可視化しています。
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